« 「グロッキー」「バタンキュー」 -死語の世界はあるのです(4) | トップページ | 超人バロム1 -日本初合体ヒーローの誕生 »

2007年8月29日 (水)

『いい日旅立ち』 -旅にロマンを感じた時代


「ああ 日本のどこかに 私を待ってる人がいる」あまりにも有名なこのさびの部分で気づかれた方は、おそらくコマーシャルで一時期盛んにこの曲を聴かれた 方だろう。谷村新司が作詞・作曲をし、山口百恵が歌った『いい日旅立ち』というこの曲は、国鉄(現在のJR各社が分割する前の組織)が昭和53年 (1978年)に「ディスカバー・ジャパン」という旅行促進のキャンペーン・ソングとして誕生した。昭和レトロ大全ではこの曲にまつわる数々のエピソード を取り上げてみたいと思う。

「ディスカバー・ジャパン」は、昭和45年(1970年)の大阪万国博覧会(万博)以降に旅客確保のために行われたキャンペーンである。昭和39年 (1964年)の東京オリンピック以降、国鉄はインフラ整備に巨額を投じてきた。特に東海道・山陽新幹線の延伸は日本の大動脈となる一大事業であり、鉄道 の近代化には欠くべからざる計画であったが、一方で莫大な借金を背負うことを意味しており、投じた資金の回収が急務となっていた。このために、インフラの 有効利用を目指して各駅にスタンプを設置するなどの顧客獲得策が取られていった。

こうした中で、当時国鉄と関係の深かった日本旅行と日立製作所がスポンサーとなる形で製作されたのが『いい日旅立ち』だったのである。調べるまで全く気が付かなかったのだが、wikipediaによれば、『いい日旅立ち』、『いい日旅立ち』 と、スポンサー2社の略称が題名に入れられているというのは驚きだった。当時絶大な人気を誇っていた山口百恵の曲ということもあり、『いい日旅立ち』は累 計売り上げ約54万枚(オリコン調べ)というヒットを博し、キャンペーンも昭和59年(1984年)まで続くほど好評であった。

この曲は歌詞にもあるとおり旅をテーマにした曲だが、「旅立ち=門出」というイメージから結婚式や卒業式で歌われることの多い曲だが、作詞した谷村によれ ば祝いの席にふさわしい歌詞ではないという。事実、歌詞の内容からは不幸や別れが感じ取られるし、気持ちを変えて幸せを探そうとするというどちらかといえ ば傷心の旅というイメージであろう。ただ、旅情を表すのに余りあるほどぴったりした詩と曲であったため、楽しい旅行にもけっして違和感が感じられないとこ ろがヒットの所以(ゆえん)であったかもしれない。

この曲と「ディスカバー・ジャパン」キャンペーンには個人的な思い出もある。この時期のコマーシャルに、日本の駅を紹介するというシリーズがあった。その 一つに、山陽本線の山口県内にある「神代(こうじろ)」という駅が紹介されたことがある。駅のプラットホームから道路を隔ててすぐ目の前に瀬戸内海の海が 広がるという絶好のオーシャンビューが自慢の小さな駅であった。駅長さんが自ら紹介するというスタイルだったのだが、私の祖父はこの神代の駅のプラット ホームを戦前に造成していた上に、一族の菩提寺がかつて神代にあったのである。周りには何もない、ひなびた駅であったが、風情のある駅であった。また、地 方都市のパソコンメーカーとして頑張っているフロンティア神代という会社があるが、社名の「神代」はこの駅からつけられている。個人的には『いい日旅立 ち』と神代は切っても切れない縁があるものなのである。

その後第三次中曽根内閣の際に巨額赤字の解消を目的に国鉄の分割民営化が行われ、昭和62年(1987年)4月1日以降は現在のJR各社の形態に移行し た。運営会社は経営の効率化を迫られ、不採算路線は廃止や第三セクターに運営が移行され、乗降客の少ない日本各地の駅が無人駅となるなど、鉄道をめぐる環 境も一変した。そのような中、『いい日旅立ち』は平成15年(2004年)、JR西日本の新たなキャンペーンである「DISCOVER WEST」に採用され、一部の歌詞を変更して鬼束ちひろがカバーし『いい日旅立ち・西へ』として再度好評を博した。

時代の変遷によって歌をめぐる環境も一変した感のあるこの曲だが、いつの時代も変わらない旅情を持っている曲として人気があるためか、『いい日旅立ち』は 文化庁等が主催する「日本の歌百選」に選ばれるなど、現在でも歌い継がれている。キャッチフレーズではないが、この曲には昭和レトロをなつかしむのと同様 に、「日本を発見する」という回帰的なメッセージを感じてしまうのである。

参考リンク

wikipedia http://ja.wikipedia.org/
『いい日旅立ち』歌詞 http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=35524
『いい日旅立ち・西へ』歌詞 http://www.hi-ho.ne.jp/momose/mu_title/iihi_tabidachi_nishie_w.htm


広告


トップページへもどる
記事先頭へもどる

|

« 「グロッキー」「バタンキュー」 -死語の世界はあるのです(4) | トップページ | 超人バロム1 -日本初合体ヒーローの誕生 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/215719/16275280

この記事へのトラックバック一覧です: 『いい日旅立ち』 -旅にロマンを感じた時代:

» 結婚式の歌 []
大切なイベントである結婚式。そんな結婚式の余興で歌をお願いされたことはありますか?新郎新婦の人生の一大イベントある結婚式。歌の余興は結婚式の定番余興の一つとなっています。余興での歌はただのカラオケと違って、新郎新婦への贈り... [続きを読む]

受信: 2007年8月29日 (水) 22時16分

« 「グロッキー」「バタンキュー」 -死語の世界はあるのです(4) | トップページ | 超人バロム1 -日本初合体ヒーローの誕生 »