« BCL -短波放送から世界が見えた(1) | トップページ | BCL資料 -海外の日本語放送局 »

2007年7月23日 (月)

BCL -短波放送から世界が見えた(2)


 ここからはマニアの世界であるBCLの楽しみをお伝えしたい。懐かしさのあまりやや取り乱す場面があってもお許し願いたい。昭和レトロな時代のBCLは、放送局の受信ができれば満足というほど単純でもなく、放送聴取以外にもさまざまな楽しみ方があったのである。その一つに、ベリカード(Verification Card:受信証)の収集がある。

 海外の放送局を受信した際に、受信状態や番組への感想を記した受信報告書を郵送すると、放送局によってはベリカードを発行してくれることがある。放送局側は世界の各地域で短波放送がどのような受信状態となり、リスナー(聴取者)がどのような意見を持っているのかを知る上で貴重なデータとなる。また、リスナーはその放送局を受信できたという証明を得られる上に、場合によっては放送局側が用意したノベルティ(適切な表現が見つからないのだが、受信者へのお礼としてベリカードとともにさまざまな品を同封することがあった)を収集できるというメリットがあるのである。
 受信報告書の書き方については、キクチラヂオ堂さんのホームページが参考になるので、興味のある方はご参照願いたい。基本的には時間・場所・番組・受信状態・感想といった内容を記載する。受信状態の記入に用いるのが「SINPOコード」とよばれるもので、国際的に認められた受信状態の評価方法である。S (Signal Strength:受信強度)I(Interference:混信)N(Noise:雑音)P(Propagation Disturbance:伝搬障害)O(Overall Rating:総合評価)を5段階の数値で記入する。これらの記載が確実でないとベリカード発行に至らず、感謝状にとどまる場合もある。また、日本語放送を行っている放送局の場合は日本語での記載で問題ない場合が大多数だが、外国語放送の場合は放送局の所在する国の言語か、英語で記載する必要がある。マニアの間で話題となる珍局(受信が困難な放送局。例えばは「福建前線広播電台」や「ブータン放送」などを受信できることは極めてまれであった)のベリカード保持者の大半は、英語放送を聞いて英語で受信報告書を書いて送っているのである。また、放送局側に郵送の負担を負わせないために国際返信用切手券(通称 IRC)を同封するのもエチケットである。
 こうしてベリカードを収集する趣味の他に、ラジオの改造や付帯設備にこだわることも多い。例を挙げるならば、アンテナである。一般的なラジオにはたいていロッドアンテナ(ラジオ本体から金属の筒が延びるタイプのアンテナ)が標準装備されているが、送信出力の弱い放送局や電波の状態によってはロッドアンテナでは受信が難しいことがある。そこで外部アンテナが登場することになる。最も単純な外部アンテナは、アンテナ線を水平に数メートル伸ばしたものをアンテナ端子に接続するだけでよいが、凝り始めるときりがなく、ループアンテナやダイポールアンテナを屋根やベランダに何本も張り、セレクタで切り替えて使うという猛者(もさ)もいるという。また、デジタル周波数カウンタで選局が簡単になるのを嫌い、自分の手で選局ダイヤルを微調整するという職人肌(?)のリスナーも存在する。BCLといっても楽しみ方は人それぞれなのである。
 電子工作が得意なリスナーの中には、受信機そのものを自作するという電脳アキバ系のファンもいる。機械いじりが好きな人やお金をかけたくないという人は、秋葉原でパーツを買って自分で組み立てることも可能なのである。調べてみたところ、100円ショップで購入できるFMラジオを改造して短波放送受信ラジオにしてしまったケースまである。私もかつてゲルマニウムダイオードとクリスタルレシーバで受信できる電源いらずのラジオを製作したことがあるが、時代は変わったものである。
 このように、BCLは初心者からマニアまでレベルを問わず楽しめる趣味として長年人気があった。しかし、海外の情報が比較的楽に手に入るようになり、趣味の選択肢が無限大にある現在では、BCLの人気はかつてのブーム時のような賑わいはなくなっている。かつてBCLファンの人気を集めたBBC(イギリス)、RAI(イタリア)、DW(ドイツ)、ABC(オーストラリア)といった放送局が相次いで日本語放送をとりやめるなど、BCLの環境も後退しているように見える。しかし、一方では約30年前に発売されたSONYのスカイセンサー5900などのBCLラジオが1万円前後、程度のよいものになると発売当時の価格近辺で取引されている。故障品をレストアして再流通させている方もあると聞く。こうした需要は、当時の中学生や高校生が今や40代から50代という年齢となり、時間や金銭的な余裕ができて再度BCLに注目が集まっているということもあるらしい。年月を経ても根強いファンがいるのは本当にありがたいことである。
 ところが、このBCLを根底から揺るがす事態が明らかになった。屋内のコンピュータ通信に利用する目的で開発されたPLC(Power Line Communications:電力線搬送通信)である。PLCは家庭の電源コンセントの線を利用して通信するが、短波放送と同じ周波数帯を利用するHF -PLCという規格の場合、PLCのノイズが短波放送に乗り、受信が困難になる可能性が指摘されている。現時点では影響の度合いは未知数であるが、微弱な電波を扱うBCLの場合には少なからぬ影響を受けることになるという。ファンとしては見過ごせないところである。BCLが昭和レトロな趣味として残り続けるためには、その環境を残すことが大切だが、今後の展開には十分注意していきたいものである。

参考リンク
100円FMラジオを利用した、短波ラジオの製作 http://scw.asahi-u.ac.jp/~sanozemi/Sakuhin/radio03/radio.html
BCLに必要なもの http://home.u01.itscom.net/hiroo-n/hitsuyounamono.htm
BCLラジオ博物館 http://www31.ocn.ne.jp/~radiokobo/bcl.html

BCL資料 -海外の日本語放送局 へ移動


広告


トップページへもどる
記事先頭へもどる

|

« BCL -短波放送から世界が見えた(1) | トップページ | BCL資料 -海外の日本語放送局 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/215719/15853719

この記事へのトラックバック一覧です: BCL -短波放送から世界が見えた(2) :

« BCL -短波放送から世界が見えた(1) | トップページ | BCL資料 -海外の日本語放送局 »